200年以上続く伝統技術、五泉は全国三大白生地産地/株式会社橫正機業場
五泉市地域おこし協力隊の本間です。今回は日本の伝統産業である絹織物を製造する株式会社横正機業場の横野恒明社長にお話を伺いました。
五泉の絹織物産業の始まりは江戸中期と言われています。五泉市では古くから養蚕を行っていました。その繭を絹糸や絹織物に加工して売り出すようになったことが始まりと言われています。
この記事では五泉産の絹織物の特徴や横正機業場さんが未来のために始めたことまで様々な観点から紹介していきます。
五泉で作っているのは・・・
五泉では、僧侶が身に着ける法衣と呼ばれる衣装や着物など和装の素材を中心に作っています。真っ白なその素材は白生地と呼ばれています。京都府丹後、滋賀県長浜に並び、三大白生地産地とされ、古くから織物で栄えてきました。白生地は全国各地の染めの工場に運ばれ、染められた後、縫製されて製品になります。
五泉だから出来た織り方「濡れ緯(ぬれよこ)」
五泉で織られる織り方の種類は様々ありますが、代表的なのは濡れ緯という織り方。横正機業場さんも得意とされています。緯糸を濡らして織っていくことで隣り合う緯糸が水分によって密着します。密度が高く光沢が増した織物が出来上がります。
そんな濡れ緯が発展したのは、五泉市の不純物が少ない水が関連しています。白生地は織った後に糸についた不純物を特殊な水で落とす精錬と呼ばれる過程があるのですが、不純物が多い地域では濡れ緯を作っても、糸についた不純物が特殊な水と化学反応を起こし変色してしまうそうです。美しい白生地には不純物が少ない五泉の水が適しているんですね。
そんな濡れ緯ですが、機械化が難しいとされています。
織っていく糸を切らしてしまったとき交換する際にすぐに気づかないと糸が乾いてしまい、本来の質感が出なかったり、糸が切れてしまったときに気づくことが出来ないなど職人の技術が不可欠です。横野社長は「職人の育成や人材確保などが課題になってくる。続けていけるように取り組んでいきたい。」と仰っていました。
横野社長の想い
横野社長から五泉の産地の今後について、お話しいただきました。
「絹織物は五泉の地場産業として先代から受け継いでもらったので、これからも守っていきたい。私たちの会社では自社ブランドを始めたが、今までのやり方に囚われず、時代に合わせて柔軟にやっていきたい。昔は五泉には多くの織物工場があったが今は3社しかない。それでも五泉の産地の技術の高さや濡れ緯は全国に誇れるもの。今までは自社で持つ技術を奪われないようにそれぞれの会社でやってきたが、今はその段階ではなく、産地を守り抜くため、お互いの会社が協力していく必要があると思っている。」
と仰っていました。産地を守り抜く強い意志と白生地への誇りを感じました。
橫正機業場の自社ブランド
今までは他の企業から製造の注文を受けて製造するOEMと呼ばれる形で事業を行っていましたが、横野社長がお話ししていた"時代に合わせた取り組み”として始めたのが自社ブランドの開発でした。質の良さや技術力の高さを直接消費者に伝える突破口として今後も取り組んでいくそうです。
現在、横正機業場さんでは「絽紗」と「しろずきんちゃん」という二つのブランドを運営しています。
絽紗は「絽」と「紗」と呼ばれる僧侶が身に着ける夏用の法衣や着物の織り方を用いて軽やかな素材で「本物」「美」「絹」の3つの要素にこだわったストールやマスクのブランドです。
しろずきんちゃんは「ベビーファースト」というコンセプトを掲げ、赤ちゃんが触れるものにこそ安心できる素材を使ってほしいという思いから立ち上がったブランドになります。製品は名前の通り、ほとんどが真っ白。真っ白な生地が赤ちゃんの笑顔を引き立ててくれます。
今回ご紹介した絽紗やしろずきんちゃんは新潟伊勢丹の越品コーナーや下記サイトのオンラインショップからお買い求め頂けます。実際に触れることで絹織物の素晴らしさを感じてみてはいかがでしょうか?
シルクのインナーマスクを着けてみた!
取材の際、横野社長に「絽紗」のインナーマスクを頂きました!
マスクの内側に着けるマスクでリピーターさんが多い商品ということです。柔らかくサラサラとした着け心地で、マスクを着けているのに快適に過ごすことが出来ました。リピーターさんが多いのも頷けます。
絹(シルク)は、「シルクのような」という比喩表現があるように、艶や柔らかい質感は絹の代表的な特徴になります。その他にも、摩擦による肌のダメージが少ない、紫外線カット、着けていても肌の表面を乾燥させにくいなどの効果があり、肌に優しい素材になっています。
冬は風邪が流行るなど、マスクを着ける機会も増えてくると思います。感染対策にプラスして、シルクでお肌も労わってあげませんか?
まとめ
ここまで五泉の織物産業について触れながら、横正機業場さんのご紹介をしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
僕は以前から五泉市には絹織物という素敵な産業があるということは、耳にしていたのですが、実際に工場を訪れたことはありませんでした。今回、工場を見て、話を伺う中で、横正機業場さんをはじめ五泉の絹織物という産業がこれからも長く続いていってほしいと強く思いました。