【自社ブランドがもたらしたもの】株式会社ウメダニット
今回ご紹介するのは五泉市今泉でニットの製造を行う株式会社ウメダニット(以下、ウメダニット)さんです。
アパレルブランドからの受託製造で繫栄してきたニットの一大産地五泉で、ウメダニットは12年前に自社ブランドを立ち上げ、五泉のニット業界をリードしてきました。
今回は、自社ブランドの発起人で、ウメダニットの3代目社長を務める梅田大樹さんにお話を伺いました。現在、5つの自社ブランドを運営しているウメダニットですが、今回はその中でも最初に立ち上がったWRAPINKNOT(ラッピンノット)にフォーカスします。立ち上げたきっかけ、ブランドが会社にもたらした効果、そして後半では、昨年10月にオープン1周年を迎えたファクトリーショップ、The Knit Barについてもお話を伺いました。
WRAPINKNOT(ラッピンノット)
-まずはWRAPINKNOTというブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。
梅田社長:僕は洋服が好きでこの会社に入ったんですけど、当時工場で作っている服にひとつも自分の知っているブランドがありませんでした。全部の依頼がありがたいのはもちろんなのですが、いわゆる百貨店メインの高級ミセスゾーンと呼ばれるブランドさんだけ作っていました。なので自分が良いと思うものとの乖離も激しくて、ご依頼いただいたときに、「このデザイン素敵だな」みたいにテンションが上がることがあまりありませんでした。
その現状に、とても危機感を感じて、うちの会社にファッションが好きで入ってきた若い人が「あれ?思ってたのと違うな」って辞めてしまうんじゃないかって思ったんです。なので、自分たちでブランドを運営することで自分たちで生み出せるチャンスがある、従来のメーカーとしての工場だけではなく、そんな在り方も今後大事になってくるんじゃないか、そう思ってWRAPINKNOTを立ち上げました。
-梅田社長自らの危機感から生まれたブランドなんですね。
梅田社長:あと、友人からの言葉も大きかったですね。有名ブランドで働く友人がうちの工場を見に来てくれたことがあって、その時に「いろんな国内の工場を見てきたけど、この規模の工場でこの精細さ出来る所は本当に無いからお前凄えぞ。なんかブランドやった方が良いんじゃない?」って言われたんですよね。うちの工場の核となるニットの構成力や異素材を縫い合わせる技術力、目の細かいシャープなニットが編めるというところも褒めてくれて、自信を持つことが出来ました。背中を押してくれましたね。
-ブランドの運営が未経験の中でのチャレンジということで苦労されたことはありましたか?
梅田社長:もちろん何もかもがゼロからのスタートなので、分からないことも多くて、他の人が当時の私を見たらなんでも苦労に思うんじゃないですかね。でも、楽しかったし、大変っちゃ大変だったんですけど、やりがいとか楽しさが上回っていたので、あんまり苦労したっていう実感ってないんですよね。
-夢中になって打ち込んでいたんですね。実際にブランドを立ち上げてから12年ということですが、ブランドを立ち上げて工場全体として何か変化などありましたか?
梅田社長:そうですね、リクルートとニット力の向上という部分で良い効果があったと感じています。まずリクルートでは、今までより、服飾系の専門学校だったり服に興味があったり、自分で何かを作りたいという方が増えてきました。これは僕たちのブランドを知ってもらって、というところなのでやってきて良かったというのはやっぱりありますね。
ニット力の面でいうと、一つの商品を作るのには、どういう素材、どういう太さ、どの機械でどんな洗い方でっていうのが、全部関わってくるんですけど、こうしたら商品が出来るっていうようなレシピ的なものがすぐに出せる知識と経験っていうのが、今までは多分そんなに無かったんです。アパレルさんから細かい指示を受けたら作れるんですけど、「なんか良い感じにやってくれ」みたいな曖昧な注文の時に「こうした方がいい」って言えるそのノウハウが無かった。そんな中で自社ブランドを10年以上やってきたことで、いろいろ失敗も含めて試行錯誤した中で、こういう時はこうした方が良いというのが、僕らの中でノウハウとして出来たっていうのが一番良かった点かなと思います。
-それまでメインだったOEM(受注生産)よりも、自分たちで企画して、製造してっていう自分たち主導という所は大きかったんですね。
梅田社長:間違いなくそうですね、依頼されたからやるっていうのと自分たちで売るために必死こいてやるっていうのでは全然違うので、自分の事として取り組んだ経験値はかなり大きいですね。
-シーズンごとに商品を出されていますが、今年はどんな感じの商品が発表されるのでしょうか!?話せる範囲で教えてください!
梅田社長:最近、若めな方に向けたアイテムを作ってきたので、そういう所を今一度修正して、メンズのラインは特に大人な感じにリブランディングしていきたいと考えています。今、準備をしている段階ですが、期待して頂ければと思います。
The Knit Bar
-まずはオープン1周年おめでとうございます!このショップを通してどのような価値を提供していきたいと考えていますか?
梅田社長:お店のテーマである交流はもちろんですが、その先には僕たちの目指す最終形、「お客さんの日々を豊かにする」というものがあります。そのためのツールが僕らはファッションというだけなんです。極論それに寄与できればツールは何でも良いと思っています。昨年はThe Knit Bar マルシェというイベントを行い、カフェや直売所など五泉市内外の様々な店舗に出店してもらいました。店名の通りお酒のイベントがあっても良いかもしれないし、そういう想像は常に膨らませています。ニットに限らず、五泉市のものを僕らのフィルターで今までとは少し違う切り口で紹介することは引き続きやっていきたいと思っています。
-ニットに捉われないというのはすごく面白いですね。可能性が広がりますね。今年は2年目ということでどのようなビジョンを描いていますか?
梅田社長:お店の認知度もまだ低いし、今年はThe Knit Bar in niigataやin nagaokaみたいな感じで市外にスポットで出店する計画を立てています。新潟市や長岡市にお住いの方には是非楽しみにしていて欲しいですね。あと、先ほど話したThe Knit Bar マルシェも今年から年に1回ではなく、春と秋の年2回の開催にしていきたいと考えています。
-これは楽しみ!HPやSNSで更新される情報をチェックしなきゃですね!
ここまでお話を聞いていると、マルシェを通して異業種の方と交流したり、The Knit Barでもお店として交流を大事にされていたり、「ウメダニット×〇〇」という感じでかけ合わせることを大事にされていると感じます。
梅田社長:いろんな交流を増やす、コミュニケーションを増やすというところは意識しています。その結果、今、お寿司屋さんに「何か一緒に出来ないか」と言ってもらっていたり、今までにないような交流が生まれ始めています。そういう交流の中でただのニットメーカーではないところに行けた方が楽しいよねっていうところはみんなで話しています。
ニットの業界ってあまり大きくないので、ニット業界の中で有名になっても、一般の人には中々届かないんですよね。だったらもっと他のジャンルとコラボして、新しい物を作っていきたい。その結果、「五泉でニットが有名でその中でもウメダニットっていうちょっと異質な工場があるらしいよ」って知ってもらえたら嬉しいですね。
従来のニット会社とは視点を変えてニットの可能性を広げるウメダニット。異業種との交流の中で、今後どんな化学反応を私たちに見せてくれるのか、とても楽しみです。ウメダニットが仕掛けるブランドやイベント等、様々な動きに今後も注目していきたいですね。
【次回のThe Knit Barマルシェ】
【ウメダニットのその他のブランド】
・Www(WRAPINKNOT wool wear)
・COZ manufactured by WRAPINKNOT
・Wants
・UMEDA
・Calin
【株式会社ウメダニット】
〒959-1835
五泉市今泉137
営業時間:8:25~17:25
3/26からは営業時間を8:30~17:30とし、
年間休日5日増
定休日:五泉ニット工業協同組合カレンダーを下に社内カレンダーを策定
【The Knit Bar】
営業日:土・日・祭日
営業時間:11:00~16:00
インタビュー終了後、現在、The Knit Barを担当している多田公平さんに店内と工場を案内して頂きました。最後にそこで撮影した写真をフォトギャラリーとして掲載したいと思います。
The Knit Bar
Factory